女性医師による便秘外来のご案内
女性医師による便秘専門外来(完全予約制)が
2022年1月11日(火)よりスタートしました。
男性医師にはお話ししにくいことも
女性医師にであれば、お気軽に
ご相談いただけると存じます。
女性管理栄養士による栄養指導も
受けていただけます。
ご希望の方は、お電話にてご予約ください。
完全予約制ですのでご注意ください。
◇ 2022年1月11日(火)より
◇ 毎週火曜日 10:00~12:00
◇ 担当:岩瀬啓子 医師
便秘のおはなし その13
便秘のおはなし その13
実は日本の便秘治療は世界のすう勢とはかけ離れています。
わが国では酸化マグネシウムと刺激性下剤を使用するのが
一般的ですが、海外では刺激性下剤を毎日処方することは
ありません。海外の医師が日本の便秘治療を見てびっくり
されるとのお話もあります。
刺激性下剤をほぼ毎日のように使用するのは
いろいろと問題を生じます。
刺激性下剤としておもに使用されるものには、センナや
アロエ、大黄などのアントラキノン系薬剤です。
アントラキノン系薬剤の効果は強力ですが、
服用を続けることで、次第に薬剤耐性が生じて
効きが悪くなります。
効きが悪くなると服用する量を増やすなど精神的に
依存状態となったり、便意を感じにくくなったりします。
最悪の場合、腸管の運動が極端に低下する「結腸無力症」
という状態に陥り、手術が必要となることもあります。
治療の基本は、便の量を増やしたり、便を軟らかくする
薬剤を中心にして、刺激性下剤はどうしても排便が
なかったときの緊急避難的に使用するというものです。
最近では新しい便秘薬がいろいろと出てきています。
今までとは違い薬の選択の幅が広がり、便秘治療も
大きく変わろうとしています。
便秘でお困りのことがあればご相談ください。
ご覧いただきましてありがとうございました。
便秘のおはなし その12
便秘のおはなし その12
食物繊維を極める
前回食物繊維についてお話ししましたが、
食物繊維は水に溶ける「水溶性食物繊維」と
水には溶けない「不溶性食物繊維」とに分類されます。
それぞれの特徴を以下にまとめます。
水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 |
・食品の水分を吸収してゲル化して便を柔らかくします。・善玉菌のエサとなり腸内環境を整えます。・胆汁酸やコレステロール、人体に有害な物質などを吸着して体外に排出します。
|
・水に溶けず水分を吸収して膨らみ腸を刺激してその運動を活発にすることで 便通を良くします。
|
多く含む食品 | 多く含む食品 |
アボガド、らっきょう、ゆりね、オクラ、ヤマイモ、こんにゃく、海藻、ゴボウ、納豆、オートミール、熟した果物
*こんにゃくはスーパーなどで販売されているものは凝固剤で固めているため不溶性です。 |
豆類、おから、エリンギ、えのき、切り干し大根、小麦ふすま、干し柿、市販品のこんにゃく |
それぞれの食物には水溶性食物繊維も
不溶性食物繊維も両者が含まれています。
実際の含有量は下記をご参照ください。
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/fiber/intake/foods-amount/
以上のことから、便を軟らかくするためには「水溶性食物繊維」を
便の量を増やしたり、腸を動かすためには「不溶性食物繊維」を
多く摂るとよいことがわかります。
それではタイプ別にどのように食物繊維を摂れば良いのかを
ご説明します。(便秘のおはなし その6参照)
○腸の動きが乱れる(痙攣性便秘)の方の場合
おなかがゴロゴロいうのに便が出てこない、コロコロ便と
下痢とが交互にある、などの症状のある方は
「水溶性食物繊維」を多く摂ると良いでしょう。
ご注意:このタイプの方が、「不溶性食物繊維」を
多く摂ると、腸が刺激され過ぎて腸の動きが
ますます乱れて便秘がひどくなることがあるのでご注意ください。
○腸の動きが悪い(弛緩性便秘)方の場合
便の回数や量が少ない、おなかの音があまりしない、
年とともに便秘になった、などの症状がある方は
「不溶性食物繊維」を多く摂ると良いでしょう。
次回は便秘の治療方法についてです。
【過去の記事はこちら】
便秘のおはなし その11
便秘のおはなし その11
以前に便秘の解消に食物繊維をバランス良く摂ることが
大事であることに触れました。
では、いったい食物繊維はどのようなものをどれくらい
摂れば良いのでしょうか?
日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、
食物繊維の摂取目標量は、18~69歳において
1日あたり、男性では20g以上、女性では18g以上とされています。
これが排便の促進に必要な量となると「1日20~25g」となります。
具体的には、レタスで摂取すると仮定すれば、1日に5個食べなければ
なりません。これは現実的にはなかなか難しい目標です。
そこで、以下に食物繊維の多い食品のリストを挙げてみます。
食 品 名 | 食物繊維量(100gあたり)
白きくらげ(乾燥) 68.7g
黒きくらげ(乾燥) 57.4g
干しひじき 51.8g
乾しいたけ 41.0g
刻み昆布 39.1g
カットわかめ 35.6g
かんぴょう(乾燥) 30.1g
干しずいき 25.8g
切り干し大根 21.3g
きな粉 18.1g
食物繊維を効率的に摂る工夫として、
・味噌汁にしめじなどのきのこ類やわかめなどの海藻類を追加する
・煮豆やおからなど一品追加する
・白米は麦ご飯や玄米ご飯に、食パンはライ麦パンや全粒パンに変える
などがおすすめです。
次回は食物繊維をさらに極めます。
【過去の記事はこちら】
便秘のおはなし その10
便秘症のおはなし その10
プロバイオティクスとプレバイオティクス
食事により腸内環境を整えることが便秘症の
解消には重要となります。
そこで重要となるのがプロバイオティクスと
プレバイオティクスというキーワードです。
プロバイオティクスとは?
腸に有害な病原菌をやっつける「抗生物質(antibaiotics)」
に対して提唱された概念で、「腸内フローラのバランスを
改善することによって宿主の健康に有益に働く生きた微生物」
と定義されています。簡単に言えば、食べることによって
健康に役立つ微生物、すなわち善玉菌です。
代表的なものとしては、ヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆、
漬け物に含まれるビフィズス菌や乳酸菌が挙げられます。
プレバイオティクスとは?
「大腸の特定の細菌を増殖させることなどにより、
宿主に有益に働く食品成分」と定義されています。
これも簡単に言えば、善玉菌のエサのことです。
オリゴ糖や食物線維がこれに当たります。
オリゴ糖は大豆、たまねぎ、ゴボウ、ねぎ、
アスパラガス、バナナなどに多く含まれています。
食物線維については別の機会にご説明いたします。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを
組み合わせたシンバイオティクスという考えがあります。
プロバイオティクスである善玉菌に加えて、
そのエサとなるプレバイオティクスも同時に摂取することで
腸内の環境を整えて、感染や炎症を制御します。
現在の医療で広く取り入れられている考えです。
腸内環境の改善は便通にもよい影響をおよぼすことが
期待されています。
次は食物繊維についてです。
【過去の記事はこちら】
便秘のおはなし その9
便秘のおはなし その9
今回は便秘の解消方法の
②食事についておはなしします。
その7で触れましたが、便はつぎのものから
できていましたね。
「水分」、「食べたもののカス」、「腸内細菌」、
「腸管から剥がれ落ちた細胞」
このなかで私たちが変えることのできるものは
「腸管から剥がれ落ちた細胞」以外になります。
便秘症を解消するために以下のことを心がけましょう。
1.水分を十分に摂る
水分の摂取量が少ないと便が硬くなります。
便が硬くなると腸管内を動きにくくなり
便通が悪くなります。
朝、牛乳や水分をコップに1杯飲む習慣をつけると、
腸管が活発に動くようになります。
2.食物繊維をバランス良く摂る
「食べたもののカス」、すなわち食物繊維は
水分を吸収して便の量を増やすとともに、
腸管を刺激して運動を活発にする作用があります。
また、保水力がある食物繊維では便を軟らかくしたり
善玉菌のエサとなり腸内環境を整えたりします。
3.ヨーグルトや乳酸飲料などで腸内環境を整える
ヨーグルト、乳酸飲料、納豆、漬け物などに
含まれる善玉菌は、腸管内を酸性にすることで
悪玉菌の増殖を抑え、発癌性のある腐敗産物の
産生を抑制するとともに、腸管の運動を
活発にします。
また、腸管内でビタミンを産生し、
免疫力を高めたり、コレステロールを低下させる
効果も期待されています。
この善玉菌のことを「プロバイオティクス」と
呼んでおり注目されています。
次はプロバイオティクスについてです。
【過去の記事はこちら】
便秘のおはなし その8
便秘のおはなし その8
便秘の解消方法について
今までのおはなしを踏まえて便秘の解消方法について
触れたいと思います。
便秘の解消方法はおもに2つに分けられます。
①生活習慣、②食事です。
今回は生活習慣についてです。
①生活習慣
a.毎日朝食を摂るようにしましょう。
人間には胃・大腸反射といって、食事を摂ると
腸が動くという仕組みが備わっていて、
特に朝食後は、その反応が強く起きることが
わかっています。
余裕を持って朝食を摂ることができれば、
交感神経よりも副交感神経の活動が優位となり、
腸管の動きが良くなります。
b.規則正しい排便習慣をつけましょう。
「旅先で便秘になって困った」と言われる方が
あります。生活リズムや食事、睡眠の変化により
腸のリズムにも変調を来します。
毎日規則正しい生活を送り、食後(特に朝食後)は
便意がなくてもトイレに行く習慣をつけましょう。
c.運動やマッサージ
運動やおなかのマッサージが便秘の解消に
有用であると言われています。
いずれも、医学的に明確な裏付けがある
訳ではありません。今後の研究成果が
期待されます。
次は食事についてです。
【過去の記事はこちら】
便秘のおはなし その7
便秘のおはなし その7
便をかたちづくる成分とは?
みなさんは便が何からできているかご存じでしょうか?
今回は意外と知られていない便のなり立ちについてご紹介いたします。
一般に健康な方の便は、その80%が水分からなります。
残りの20%を占めているのは、
①食べたもののカス、
②腸内細菌、
③腸管から剥がれ落ちた細胞、
と言われています。
このうちの腸内細菌は、わずか1gの便中に
約1兆個が含まれています。
この腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、
日和見菌(ひよりみきん)の3種類に分類されています。
これらの特徴をまとめると以下のようになります。
①善玉菌:悪玉菌や病原菌の侵入や活動をおさえ、
腸の運動をうながして、腸の調子を整える。
食物線維やオリゴ糖をエサにして増える。
②悪玉菌:腸管内容物を腐敗させ有毒物質をつくる。
脂質やタンパク質をエサにして増える。
③日和見菌:善玉菌、悪玉菌の優勢な方の味方をする。
腸管内には1000種類、100兆個以上の腸内細菌が
存在していると言われ、これらを顕微鏡でのぞくと
あたかも植物が群生しているお花畑(英語でflora)の
ように見えるとのことで「腸内フローラ」と
呼ばれるようになりました。
よい排便習慣を得るためには、腸内フローラを
よりよい環境に整えることが大事です。
便秘のおはなし その8に続く
【過去の便秘の記事はこちら】
便秘のおはなし その6
機能性便秘について
生活習慣やストレス、加齢などの影響で、
腸管の働きが乱れることによって起きる
便秘を機能性便秘と呼びます。
これらは、腸管の動きが悪くなって
起きる便秘を「弛緩(しかん)性便秘」、
腸管は動いているのに、その動きが
乱れることで起きる「痙攣(けいれん)性
便秘」、便意を催すための直腸の
センサーの機能が低下するために起きる
「直腸性便秘」とに分類されています。
たとえて言うと、歯磨きペーストを
チューブから出すときに、端っこから
押し出すとスムーズにペーストが
出てきますが、このときの押し出す力が
弱いのが「弛緩性便秘」で、チューブの
あちこちを押してしまって、ペーストを
残すことなくきれいに出せない状態が
「痙攣性便秘」です。
直腸性便秘とは、便意を習慣的にがまん
していると、直腸内の便が常に
直腸を刺激するため、直腸のセンサーの
感度が落ちてしまい、直腸に便が入ってきても
便意を感じなくなってしまって便秘になるものです。
ただし、上記の便秘分類は古くから
わが国で使用されているもので、
国際的にはほとんど用いられないものです。
では、海外ではどのような分類が使用
されているのでしょうか?
海外では大腸(結腸)を通過する時間の異常と
直腸肛門機能の異常とに注目して、
「結腸通過時間遅延型」
「結腸通過時間正常型」
「便排出障害型」
とに分類することがスタンダードになっています。
この分類で問題となるのは、わが国では結腸通過時間の
測定検査法(マーカー法やシンチグラフィー)が保険では
検査ができないことや、直腸肛門機能の検査法が
普及していないことなどから実際に使用するのが困難で
あることです。
わが国でもこのグローバルスタンダードに
追いつけることが望まれます。
便秘のおはなし その7に続く
【過去の便秘の記事はこちら】
便秘のおはなし その5
便秘のおはなし その5
便秘になりやすい方について
ご説明をしてきましたが、
これまでの内容を踏まえて、
便秘の原因による
分類をご紹介いたします。
生活習慣やストレス、加齢などの影響で、
腸管の働きが乱れることによって起きる
便秘を機能性便秘と呼びます。
機能性便秘はさらに3つに分類されます。
そのほかには、大腸がんや手術による
癒着などが原因となる器質性便秘、
甲状腺機能の異常や、ホルモンの影響で
おきる症候性便秘、
薬剤によって引きおこされる
薬剤性便秘に分類されます。
1.機能性便秘
①弛緩(しかん)性便秘
②痙攣(けいれん)性便秘
③直腸性便秘
2.器質(きしつ)性便秘
3.症候性便秘
4.薬剤性便秘
このなかで、便秘の原因の多くを占める
ものが機能性便秘です。
次回からは機能性便秘についてお話
いたします。
便秘のおはなし その6に続く
【過去の便秘の記事はこちら】